7つの美徳、ふたたび・・・7つ全部揃ったよ

以前7つの美徳についてこんな記事を書いた。

人を信じることと頼ることと・・・グッチ・ミュージアム建物にあった「7つの美徳」
人を信じること。 そして信じて頼ること。 元来私はこれがとても苦手。 結局人に頼れないからお金に頼る、という方法を取っていた。 人にお願いできないから、必死にお仕事して、お金でお願いする、という今で考えると悪...

7つの美徳というのは中世キリスト教でよく取り扱われた美徳。

3つの対神徳(神様への美徳)と4つの枢要徳(人間としての美徳)の7つで構成される。

よく美術作品でも見る画題。アトリビュートと呼ばれる持ち物で何を表しているかが一目瞭然なので、知っておくと美術鑑賞が面白いと思う。

7つの美徳全体像

上の記事はどちらかというと私の呟き。

年末年始にかけて7つの美徳をインスタで紹介したので、ここにまとめておく。

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あけましておめでとうございます🌅お正月なのでおめでたく七福神ならぬ7つの美徳総セットでお送りします。 7つの美徳 ポライオロ兄弟+ボッティチェリ 1469-70 ウフィツィ美術館 7枚全てが並んだ写真。中心が最も重要とされる「慈愛」その両端に次に重要とされる対神徳、それを囲むのが枢要徳。依頼主の商工会議所裁判所はシニョーリア広場にある現グッチミュージアム。右6作品がポライオロ工房の作品だが、どれも衣装や床の質感などから北方ルネサンスの影響を感じる。それぞれの美徳を囲む建築もローマ建築から影響を受けているところがルネサンスの特徴。左端はボッティチェリの作品。他の作品と比べると動きがあり、線より柔らかさを重視している。裁判官たちはこれを見て己の美徳を忘れず裁判に臨むよう自らを戒めた。 #フィレンツェ #イタリア #西洋美術史 #イタリア観光 #フィレンツェオススメ #ウフィツィ美術館 #ルネサンス美術 #ルネサンス #シンボリズム #ボッティチェリ #美術館 #美術館巡り #海外旅行 #お正月 #七福神 #グッチ #gucci #guccimuseo #アート #イタリア美術 #美徳 #グッチミュージアム

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現グッチ・ミュージアムのある宮殿はルネサンスの頃、商工会議所の裁判所だった。

そこに飾るために注文されたのがこの7つの美徳。ちゃんと美徳を持って裁判する、という意味合いがあった。

注文は1469年。7つのうち6枚は当時大人気工房のポッライオッロ兄弟の手による。残り1枚が新人のボッティチェリ。

それでは一つ一つの美徳を見ていきたい。

3つの対神徳・・・愛と信仰と希望

対神徳は

  • 慈愛(赤)
  • 信仰(白)
  • 希望(緑)

の3つ。ちゃんと色も衣装に反映されている。

ちなみに四葉のクローバーが「幸福」なのは、この3つがあって、4つめが「幸福」だから。

慈愛

内容はインスタの記事を読んでね♪

神への慈愛、神の慈愛。愛というのはキリスト教で一番大事な教義です。だから注文も一番最初。そして真ん中に飾られていました。

炎、子供たちというのがアトリビュート。

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ポライオロ兄弟 7つの美徳より「慈愛」1469 ウフィツィ美術館 カトリック7つの美徳の内、対神徳の中から「慈愛」 慈愛は7つの美徳の中でもルネサンス期一番重要視された。 1469年共和国フィレンツェで権力を誇った商工会議所裁判所の依頼で7枚の美徳が制作された際も、この慈愛から制作された。 慈愛のアトリビュートである炎と子供が描かれている。色は赤。キリスト教では神自体が愛であると考えられており、最も高い徳である。 #フィレンツェ #フィレンツェ観光 #フィレンツェ旅行 #フィレンツェ観光ガイド #フィレンツェオススメ #イタリア #イタリア旅行 #イタリア🇮🇹 #ウフィツィ美術館 #イタリア美術 #美術館 #美術館巡り #ルネサンス美術 #ヨーロッパ旅行 #年末年始旅行 #海外旅行 #ルネサンス #西洋美術 #西洋絵画 #西洋美術史 #絵画 #キリスト教絵画 #美徳 #慈愛 #loveイタリア

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信仰

次はこちら。時代によってはこの「信仰」が最大重要視された。神様に対しての絶対的信仰。

日本人は仏教や神道の基礎文化があるので、一神教の信仰は少し概念として難しい。

旧約聖書の「アブラハム」や「ヨブ」なんかの信仰が参考になるかも。

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ポライオロ兄弟 7つの美徳より「信仰」1470 ウフィツィ美術館 カトリックでは3つの対神徳と4つの枢要徳があり、合わせて7つの美徳とされる。 1469年共和国フィレンツェで経済と政治の中心を担った商工会議所裁判所の依頼で7枚の美徳が制作された。信仰は中世では最も重要な徳とされた。手に持つのは十字架と聖杯。どちらも「信仰」を表す際のアトリビュート。同じく信仰を表す色、白を身にまとっている。上を向いているのは神に対しての信仰だから。 #フィレンツェ #イタリア #ウフィツィ美術館 #フィレンツェ観光 #イタリア観光 #イタリア旅行 #イタリア美術 #ルネサンス #ルネサンス美術 #美術館 #美術館巡り #ヨーロッパ旅行 #ヨーロッパ観光 #海外旅行 #年末年始旅行 #loveイタリア #イタリア留学 #ヨーロッパ留学 #大人の留学 #大人の旅 #西洋美術

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希望

「希望」と聞くと現代日本人は将来に希望があるように思ってしまう。

だけど中世キリスト教で言う所の「希望」は神の世界で永遠の命を得ることを意味する。

即ち現世、今私たちが生きている人生での喜びっていうのは否定すること。

21世紀の私たちにとっての希望は「頑張ったらいいお仕事につけるかも」「次のお仕事はいいお給料かも」「次の男(女)は王子様(お姫様)かも」なんていう「現世」に基づきがち。

残念ながら中世ではこの世で苦しんでも、最後の審判で神様の世界に生まれ変われるのが救い、という「希望」だった。

「希望」を打ち砕いてごめんなさい。

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ポライオロ兄弟 7つの美徳より「希望」1470 ウフィツィ美術館 美徳は7つだけど、ポライオロ兄弟が手がけたのは6つ。これも3つの対神徳の1つ。私たちが一般的に考える希望というより、最後の審判で生まれ変わることに対しての希望。緑で表される。上を見上げているのは最終的な救済である天を見上げているから。美徳には対となる悪徳があり、希望の反対は絶望。どんなツライ時も人生への希望を忘れないで生きたい。 #フィレンツェ #フィレンツェ旅行 #フィレンツェ観光 #フィレンツェ好き #フィレンツェ観光ガイド #イタリア旅行 #イタリア #イタリア好き #イタリア美術 #ヨーロッパ旅行 #ヨーロッパ旅 #ルネサンス美術 #ルネサンス #中世ヨーロッパ #中世イタリア #美術館巡り #美術館 #美術館好き #西洋美術 #西洋美術史 #希望 #宗教画 #美徳 #タロット #ウフィツィ美術館 #画家 #芸術鑑賞会 #海外旅行

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色は緑、手を合わせて天を見上げる形で表現される。

4つの枢要徳・・・

対神徳が神様に対しての徳で有るのに対し、枢要徳というのは人として備えているべき徳。

ヴァティカンのラファエロ署名の間に描かれているのでも有名。

貞節

「賢明」とか「思慮」とも呼ばれる。

自分を振り返る鏡と、知恵を表す蛇がアトリビュート。これを見つけたら「貞節」と思って間違いない。

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アントニオ・デル・ポライオロ作 7つの美徳から「貞節」1470年 ポッライオロ兄弟の工房はルネサンス期フィレンツェで最も大きなものの一つだった。 当時の芸術家達は様々な芸術を手がけた。ポライオロ工房も絵画はもちろん、彫刻や墓廟など多岐の芸術作品を手がけた。 そんな大工房を構えるポライオロ兄弟がフィレンツェの有力者の集まりである商工会議所の調停委員会から「7つの美徳」を描く依頼を受けた。 「7つの美徳」はカトリックの教義で3つの対神徳と4つの枢要徳で構成される。 これは枢要徳の「貞節」。鏡で自分を振り返ること、蛇の賢明さを持つことが描かれている。 国立西洋美術館で開催中のルーベンス展にも「賢明」という名前で出展されています。 #フィレンツェ #イタリア #美術館 #美術館巡り #美術館好きな人と繋がりたい #ヨーロッパ旅行 #ウフィツィ美術館 #名画 #名画の謎 #タロット #美徳 #国立西洋美術館 #ルーベンス展 #カトリック #キリスト教 #今日の一枚 #1日1枚 #イタリア観光

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とかくアダムとイブの話から悪の象徴として思い浮かべがちなヘビだけど、聖書に「ヘビのように聡く」という一節があり、そこからきている。

節制

水とワインを調合している様子。元はもちろん節制を重んじること。

昔のヨーロッパでは水の質がよくなく、ワインと混ぜて飲んでいたらしい。その名残。

そしてアルコールを過ぎない、という意味ももちろん含まれている。

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ピエロ&アントニオ・デル・ポライオロ作 7つの美徳から「節制」1470年 こちらもキリスト教義7つの美徳、枢要徳の1つ「節制」。中世ヨーロッパでは水の質が良くなくワインと混ぜて飲まれていた。ワインの量を調整する様子がよく描かれる。「節制」の言葉通りワインが過ぎないようにの意味もある。タロットカードにも登場する。刀に紐をかける姿で表されたり、ラファエロはヴァチカンの署名の間で手綱を引く女性として表している。この美徳と対になる悪徳は「大食」。ブラッド・ピット主演の映画「セブン」でも取り上げられたが、自分自身への戒めとしたい。 #フィレンツェ #イタリア #美術館 #美術館巡り #西洋美術 #西洋美術史 #ヨーロッパ #世界史 #絵画 #映画 #セブン #ブラッドピット #ブラピ #ブランジェリーナ #美徳 #悪徳 #澁澤龍彦 #ラファエロ #バチカン市国 #署名の間 #枢要徳 #節制 #タロット #タロットカード #マルセイユタロット #中世ヨーロッパ #ワイン #赤ワイン #ルネサンス #ボッティチェリ

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マルセイユタロット「節制」ととても似ている。一説によるとこのカードが最初にできたのと、フィレンツェでルネサンスが繁栄したのと時期がかぶるようだ。その辺の詳しい話はこちらの動画から(フランス語)

正義

これも定番の図。日本の裁判所にも正義の女神の銅像が置いてあることが多い。

罪を計るための天秤と裁くための剣で表されることが多い。目隠しをするのは後の世になってから。

ここでは天秤の代わりに天球を持っている。世界をバランスさせる意味。

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ピエロ&アントニオ・デル・ポライオロ作 7つの美徳から「正義」1470年 キリスト教義7つの美徳、枢要徳の1つ「正義」。これもタロットカードに登場する。剣と天秤を持つ図像が多い。天秤で計って公平に剣で裁くことを表すことから、裁判所でもこの彫刻を見かける。 そもそもの依頼はフィレンツェ商工会議所の裁判所からの依頼。従ってこの絵は7枚の中でも重要な1枚だった。 #フィレンツェ #イタリア #ウフィツィ美術館 #西洋美術館 #美術館 #美術館巡り #タロット #海外旅行 #ヨーロッパ旅行 #イタリア旅行 #イタリア観光 #西洋美術史 #ルネサンス

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天秤と剣は大天使ミカエルのアトリビュートでもある。この人(じゃなくて大天使さまね)は最後の審判の時に魂の重さを計って、その魂(人間一人一人)が天国にいくか地獄に行くかを決める。

大天使ミカエル様。右手に剣、左手に天秤。魂の重さを計ってる。

秤をアップすると中で手を合わせている人たちが!気持ちが痛いほどわかる。地獄には行きたくないよね。

勇気

「力」や「剛毅」とも。大体女性で表されるけど、ヘラクレス(男)が棍棒でライオンを殴ってる図で表されることもある。

前出のラファエロ「署名の間」では女性がライオンを制している。男がライオンを制するのは物理的な力。女性がライオンを制するのはまた別の意味があるよね。どちらが本当の強さなのか、勇気なのか。

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フィレンツェ商工会議所裁判所の依頼で描かれた7つの美徳。6つまでは当時人気工房だったポッライオロ兄弟が制作。この「剛毅」は25歳のボッティチェリが制作。ボッティチェリの名前が正式な文書に記載された作品。ポライオロ兄弟6つの作品と比較すると顔の表情の柔らかさ、肉体の動きなどが感じられる。師匠フィリッポ・リッピの画風がまだ見られる。枢要徳の1つ剛毅を表す鎧と棍棒がアトリビュート。兜をかぶっているもの、ライオンが描かれているものなども剛毅の作品としてある。 #フィレンツェ #ボッティチェリ #イタリア美術 #ヨーロッパ旅行 #美術館巡り #ルネサンス美術 #ルネサンス #フィレンツェ観光 #美術館 #ウフィツィ美術館 #グッチミュージアム #世界の美術館 #名画 #タロット #タロットカード #枢要徳 #美徳 #美術 #アート #海外旅行 #絵画 #連作 #シンボリズム #象徴学 #西洋美術 #西洋美術史 #宗教画

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この一枚だけボッティチェリの作品。彼の実質的デビュー作となった。

終わりに…復習

7つの美徳わかったかな?これからどこで見てもわかるよね。美術館で私たちを見たら身近に感じてくれたら嬉しいな♪

対神徳 or 枢要徳 美徳の名前 持ち物(アトリビュート)
対神徳 慈愛 赤、炎、子供
信仰 白、十字架、聖杯
希望 緑、天を見上げている女性
枢要徳 貞節(賢明、慎重) ヘビ、鏡
節制 2つの壺 を入れ替え、手綱、剣に紐を巻きつける
正義 剣、天秤、地球儀(目隠しは後年)
力(勇気、剛毅) 鎧を着た女性、武器を持っている、ライオン

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