ウフィッツィ美術館 人気作 フィリッポ・リッピ「聖母子像」
ウフィッツィ美術館の人気作の一つ、フィリッポ・リッピの「聖母子像」
画家の妻とその子供たちがモデルと言われています。
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絵も逸話もとても可愛いのですが、フィリッポ・リッピもその妻ルクレツィアも修道士と修道女。
どちらも神に仕える身なので、当時大スキャンダルになりました。
2人は駆け落ちし子供にも恵まれましたが、カトリック教会から破門となります。
破門を解くためにローマ教皇に掛け合ったのがメディチ家当主の老コジモ。
この作品は老コジモに感謝の気持ちを表して贈られたものです。
ヤコポ・ダ・ポントルモ – twGoy5ijJE6aLA — Google アートプロジェクト, パブリック・ドメイン, リンクによる
運命の出会いになったプラート大聖堂の壁画
神に仕える2人はどうやって知り合ったのでしょうか?
きっかけはフィレンツェの隣町プラートの大聖堂の壁画の制作がフィリッポ・リッピに依頼されたことです。
画題は洗礼者ヨハネの人生でした。そこに登場するサロメのモデルとして選ばれたのが若い修道女ルクレツィアでした。リッピ50歳、ルクレツィアは20歳ほどだったそうです。
テーブルの中央に座るのがヘロデ王とその妻ヘロデア。テーブルの前で踊るのがサロメです。サロメはヘロデアの娘でヘロデの姪になります。ヘロデはサロメに踊りの褒美としてほしいものを聞くのですが、サロメは母ヘロデアの意見だった洗礼者ヨハネの首を頼むのです。
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画面の左には洗礼者ヨハネが処刑されるシーン、そして右にはサロメが母ヘロデアに首を差し出すシーンが描かれています。
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聖書に登場する話ですが、19世紀にサロメはファム・ファタール(運命の女)としてモローやビアズリーなどによって妖艶に描かれるようになりました。
モローのサロメ
ビアズリーのサロメ
10年前にも訪れた想い出の街 プラート
今回のイタリア旅行で久しぶりにこの壁画を見てきました。教会が閉まる直前だったので駆け足だったのですが、ルクレツィアをモデルにしたサロメを見ることができました。
フィレンツェに留学したのがちょうど10年前なのですが、リッピとルクレツィアの運命の出会いとなった壁画を見たいと思ってその時も見に行ったのを思い出し感慨深かったです。その時には2人の息子フィリッピーノ・リッピの作品も美術館で見ることができました。
プラート大聖堂は聖母マリアの腰帯を祭ることでも知られています。このお話はまた別で取り上げたいと思います。
フィレンツェから電車で約30分。小旅行におすすめの街です。
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