フィレンツェの隠れた小さな美術館
年間1400万人(2016年調べ)の観光客が訪れるフィレンツェ。ウフィツィ美術館やドゥオーモなど観光名所がたくさんあります。
そんな中、観光客が少ない「知る人ぞ知る」の小さな美術館をインスタグラムで取り上げています。
スカルツォの回廊
トップバッターは「スカルツォの回廊です」
フラ・アンジェリコで有名なサン・マルコ元修道院美術館のすぐそばに小さい入り口があります。一見見過ごしがちですが、ここは週数回しか空いていない知る人ぞ知るの美術館です。
フィレンツェにはもともと「信心会」と呼ばれる信仰に基づいたグループがいくつもありました。この回廊はそのうちの一つ「洗礼者ヨハネ」のために捧げられたものです。
中は回廊になっていて、壁はモノクロームのフレスコ画が描かれています。信心会が捧げられた洗礼者ヨハネの人生が絵画で語られています。
これを描いたのはアンドレア・デル・サルトという画家です。日本では知名度はあまり高くないのですが、ラファエロと同じ世代。フィレンツェで16世紀に活躍しました。美術史家ヴァザーリに「間違いのない画家」と呼ばれ、彼の工房からはマニエリスムの巨匠ポントルモやフランスで活躍したロッソ・フィオレンティーノが巣立った、美術史上に置いて大きな功績を残した画家です。
モノクロームという大変珍しい様式ですが、敬虔な気持ちになれる回廊です。
それぞれのフレスコ画はInstagramで解説したものを紹介していますが、ぜひ見ていただきたい点があります。
- 他の作品を参考にしている
- ミケランジェロ作「メディチ家礼拝堂」
- ヴェロッキオ「キリストの洗礼」
- マザッチョ「ブランカッチ礼拝堂内 聖ペテロの洗礼」
- フレスコ画を飾る装飾模様
- 「グロテスク様式」と呼ばれローマ遺跡を参考にした16世紀に流行したスタイル
- よく見ると十字架とキリストの遺影が描かれている
なかなか目が行きにくい部分ですが、こういった点からぜひご覧になってください。
モノクロームのフレスコ画
それぞれの作品の紹介をInstagramから紹介します。比較作品も一緒に紹介しているので、スライドしてみてくださいね。
天使のお告げ
長年子供が生まれなかった祭司ザカリアに神の力によって子供を授かることを天使が告げる。
聖母マリアのエリザベツ訪問
天使のお告げどおり懐妊したザカリアの妻エリザベツ。そこに同じように天使のお告げで懐妊した従姉妹のマリアが訪ねるシーン。
子供に「ヨハネ」と名付けるザカリア
天使の言うことを疑ってしまったザカリアは口が聞けなくなってしまったので、子供の名前を石板に書いて天使のお告げどおりに名付ける。
荒野に修行に行くヨハネを祝福するザカリア
ヨハネは荒野で修行をすることになるのだけど、ヨハネが幼い姿で描かれているのが印象的。
キリストと洗礼者ヨハネが出会うシーン
信者に洗礼を施しているヨハネの元にキリストは洗礼を受けに来る。キリストが救世主であることがわかったヨハネは「私でいいんですか?」と問う。
キリストの洗礼
一番最初に描かれた作品。キリスト教においてキリストの洗礼は聖書に描かれる数々の説教や活動を始める重要なシーン。
説教する洗礼者ヨハネ
荒野で修行を続けるヨハネは集まる人々に悔い改めるよう説教する。
信者に洗礼を授けるヨハネ
ヨハネが他の人たちに洗礼を授ける様子。マザッチョからの影響がみられる。
捕らえられるヨハネ
時の王ヘロデを糾弾しヨハネは捕らえられる。
踊るサロメ
姪であるサロメが舞の褒賞にヨハネの首を希望する。19世紀にファムファタールの代表になったが、聖書では母の希望を叶えたとして描かれる。
処刑されるヨハネ
ヨハネが処刑されるシーン。王としての威厳と人民からの信頼の厚さの間で苦悩したが、舞の褒美として与えることで一応解決。
首を持って現れるサロメ
王の苦悩の表情が印象的なシーン。これでヨハネのストーリーは終わる。
寓意像と彫像
入り口と反対側に描かれるのはキリスト教の美徳の寓意像。そして画家アンドレア・デル・サルトと信心会を支えた司教アントニーノ・ピエロッツィの胸像が置かれる。
モノクロームの回廊、人が少ないのでぜひご覧になってください。
コメント